第五章

第五章

アイアイの大冒険 第五章④

その日の朝、郵便局は少し慌ただしかった。チワワ局長が新聞を広げたまま、奥の部屋から飛び出してきた。「アイル、シーカー! 二人ともいるか!」局長の声は、いつになく低く響いていた。「北の街道で郵便馬車が立ち往生してる。山風が強くて、荷が散ったら...
第五章

アイアイの大冒険 第五章③

村の広場は、昨日の喧騒が嘘のように静まり返っていた。朝露にぬれた石畳の上、アイルはひとり、建てられたばかりの銅像を見上げていた。 二体目の自分。にっこりと笑っているウサギ族の少女――自分そっくりのその姿を見ていると、どこかくすぐったくて、少...
第五章

アイアイの大冒険 第五章②

翌朝、ディグレンチェ村は、ふだんより少しだけ賑やかだった。郵便局の掲示板に、紙飾りのついた大きな告知が貼られていた。〈新人配達ウィーク 参加者募集〉――“村じゅうを一日で回れる人は誰だ?”アイルはそれを見上げ、胸が高鳴るのを感じた。「わたし...
第五章

アイアイの大冒険 第五章①

朝の光が、丘の上の塔の鐘をやさしく照らしていた。大草原の真ん中に位置する『ディグレンチェ村』は、まだ寝息を立てているように静かだった。草原を流れる風が村をやさしくなでるように過ぎていく。石畳の路地に並ぶ家々の屋根には露が光り、煙突から細い煙...