第二章

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アイアイの大冒険 第二章⑩【第二章 完】

誰かが扉を閉じる音もしなかったのに、気づけば階段の上はまた闇に閉ざされていた。 “シーカー”が残した余韻は、石壁に染み込むように、その場にじっと留まっている気がした。アイアイは部屋の中央にある石の台座に近づき、その表面をそっとなでた。先ほど...
第二章

アイアイの大冒険 第二章⑨

部屋の隅に腰を下ろしたアイアイは、両手で手紙をそっと開いた。紙は古びており、折れ目は何度も読み返されたようにすり減っていた。その文字は、小さく、丁寧だった。どこかで見覚えのある、やさしく、けれどどこか焦りも滲ませた筆跡。『これを見つけた人へ...
第二章

アイアイの大冒険 第二章⑧

少女の声が消えたあと、部屋はしんと静まり返った。誰も言葉を発せず、ただ自分の呼吸音が耳に残る。グリグリが、塔の壁に映っていた“窓”のあった場所をそっと触れた。しかしそこにはもう何もなかった。「……さっきの……アイルだったのかな」アイアイがつ...
第二章

アイアイの大冒険 第二章⑦

ふたりと猫族の使者が山道を進んで数時間が経った。霧はしだいに濃くなり、あたりの景色はぼんやりと輪郭を失っていった。木々の影がゆらぎ、地面の起伏も見えにくくなる中、ただ足元の感触だけを頼りに歩を進める。「……このあたり、前に来たことがある気が...
第二章

アイアイの大冒険 第二章⑥

ふたりはコリク、猫族の使者により、記録室のさらに奥へと導かれた。新たな情報が見つかるかもしれないと王に勧められたのだ。今度はコリクもついてきた。そこは本来アクセスできない領域──王国内の端末にも接続されていない、隔絶された“記憶の死角”だっ...
第二章

アイアイの大冒険 第二章⑤

鉄のようなにおいがする扉の前で、ふたりは立ち止まった。猫族の使者は、無言のまま壁のくぼみに手を差し入れると、何かをゆっくりと押し込んだ。カチリ、と鈍い音。それだけで、重たい扉は内側へ、静かに開いていった。ぎい……という音もなく、まるで空気が...
第二章

アイアイの大冒険 第二章④

アイアイは言葉を失い、その場に立ち尽くした。 風が吹いた。だが、どこから吹いているのか、分からなかった。猫族の使者は何も言わなかった。ただ静かに、そこに立っていた。「……これ……なんなの?」アイアイの問いに、猫族の使者がちらりと振り返り、ぽ...
第二章

アイアイの大冒険 第二章③

王都では“正しさ”だけが”正しい”かのようだった。 その正しさは、甘さも、ぬくもりも、感情さえも置いてけぼりにしているように思えた。デバ石の出した正解にだけ、”正しさ”にだけ従っているように思えた。でも、それで本当に、いいのだろうか?少なく...
第二章

アイアイの大冒険 第二章②

大広間の奥には、天井近くまで伸びる棚が並んでいた。  だが、その棚には本ではなく、きらびやかな菓子箱や、空っぽのガラス瓶が所狭しと詰め込まれていた。中央に、ひとりの男がいた。ふわふわのエプロンに、真っ白な王冠。手には泡立て器と木べら。鼻の頭...
第二章

アイアイの大冒険 第二章①

ふたりは並んで、城を見上げていた。高くそびえる塔と、そのまわりを囲む丸屋根の群れ。重たい雲がその背をなでるように流れていく。王城は、まるで空そのものとつながっているようにも見えた。「きっとこの先に、何かがある気がする」アイアイがそうつぶやく...