第一章

第一章

アイアイの大冒険 第一章⑨【第一章 完】

誰かが、図書館の前で立ち止まっていた。アイアイはその建物を見て、思わず駆け寄った。「……図書館! 情報があるかもしれない!」しかし扉には、デバ石の端末と、小さな文字が浮かんでいた。“アクセス権限が確認できません。情報取得条件:未達。ご利用を...
第一章

アイアイの大冒険 第一章⑧

王都ザラーリンの中へ足を踏み入れたとたん、空気が変わった。外の風の流れとは違う、どこか止まったような空気。街の中心部に近づくにつれ、その静けさは重さを帯びていった。朝焼けが街の壁を淡く染めていく。瓦屋根の家々、高く積まれた石垣、道ばたの水桶...
第一章

アイアイの大冒険 第一章⑦

くぐもったような声が、草むらの向こうから響いた。 アイアイはびくりとして顔をあげた。アイアイは暗がりから焚き火の明かりの中に入ってきた人物に急いで焦点を合わせた。ぼやけた焦点から一瞬でピントをあわせた先にいたのは、グリグリだった。両こぶしを...
第一章

アイアイの大冒険 第一章⑥

アイアイは、自分がまだ子どもで一人旅をしているのを不審に思って入城を断られたのだと思うことにした。デバ石のことは適当なことを言って追い払うための口実だったのだと。思えば、入城を待つ列に子どもは一人もいなかった。旅人たちの列は、どんどん城内に...
第一章

アイアイの大冒険 第一章⑤

夕暮れが近づくころ、丘の向こうにようやくザラーリンの城壁が姿を現した。陽の光を浴びて赤く染まる石造りの壁は、高く、厚く、どこか冷たさを感じさせるような重々しい存在感を放っていた。外壁には古いレリーフのような紋章が彫られていて、王国の歴史の長...
第一章

アイアイの大冒険 第一章④

なにかの聞き間違いだと思ってアイアイは特に気にしなかったが、まわりを見回したことで別のあることが気になった。「おばあさんは、デバ石はもっていないんですか?」この世界の人なら、ほとんどがデバ石は肌身はなさずもっている。それこそ、子どもから老人...
第一章

アイアイの大冒険 第一章③

川を渡り、午後になったころ、小さな林を抜けた先で、一本の煙が空に向かって細く立ち上っているのが見えた。近づいていくと、そこには旅装束をまとった年老いた老婆が腰を下ろし、焚き火の上に鍋をかけていた。白く長い毛と、つぎはぎの赤いショール。腰を丸...
第一章

アイアイの大冒険 第1章②

それから少し進んだ先で、小さな川が現れた。細く蛇行するその流れは透明で、底の石がはっきりと見えるほどだった。川縁に腰を下ろしたアイアイは、ポケットをさぐり、カラスの嘴から取った丸い石を取り出した。水面は朝の光を受けてきらきらと輝き、あたりに...
第一章

アイアイの大冒険 第一章①

水平線の向こうへとつづく一本の街道を、ひとりの少年が歩いていた。朝からの霧はまだ晴れておらず、見渡す先には、かすんだ丘の稜線がぼんやりと浮かんでいた。上空には1羽のカラスが旋回しており、時折、鳴き声を発している。崖の村ディグレンチェを出てす...