hikasawakikori

第一章

アイアイの大冒険 第一章⑥

アイアイは、自分がまだ子どもで一人旅をしているのを不審に思って入城を断られたのだと思うことにした。デバ石のことは適当なことを言って追い払うための口実だったのだと。思えば、入城を待つ列に子どもは一人もいなかった。旅人たちの列は、どんどん城内に...
第一章

アイアイの大冒険 第一章⑤

夕暮れが近づくころ、丘の向こうにようやくザラーリンの城壁が姿を現した。陽の光を浴びて赤く染まる石造りの壁は、高く、厚く、どこか冷たさを感じさせるような重々しい存在感を放っていた。外壁には古いレリーフのような紋章が彫られていて、王国の歴史の長...
第一章

アイアイの大冒険 第一章④

なにかの聞き間違いだと思ってアイアイは特に気にしなかったが、まわりを見回したことで別のあることが気になった。「おばあさんは、デバ石はもっていないんですか?」この世界の人なら、ほとんどがデバ石は肌身はなさずもっている。それこそ、子どもから老人...
第一章

アイアイの大冒険 第一章③

川を渡り、午後になったころ、小さな林を抜けた先で、一本の煙が空に向かって細く立ち上っているのが見えた。近づいていくと、そこには旅装束をまとった年老いた老婆が腰を下ろし、焚き火の上に鍋をかけていた。白く長い毛と、つぎはぎの赤いショール。腰を丸...
第一章

アイアイの大冒険 第1章②

それから少し進んだ先で、小さな川が現れた。細く蛇行するその流れは透明で、底の石がはっきりと見えるほどだった。川縁に腰を下ろしたアイアイは、ポケットをさぐり、カラスの嘴から取った丸い石を取り出した。水面は朝の光を受けてきらきらと輝き、あたりに...
第一章

アイアイの大冒険 第一章①

水平線の向こうへとつづく一本の街道を、ひとりの少年が歩いていた。朝からの霧はまだ晴れておらず、見渡す先には、かすんだ丘の稜線がぼんやりと浮かんでいた。上空には1羽のカラスが旋回しており、時折、鳴き声を発している。崖の村ディグレンチェを出てす...
序章

アイアイの大冒険 序章

「アイアイ」の吹いた草笛が風で運ばれ、真っ黒な崖に吸い込まれていった。「ときより強くふく風」と「真っ黒な崖」、「森の大きな木」、それに「村のみんな」。それがこの村とアイアイのすべてだった。広大な「フィクチオーン大陸」の端に位置する「岩」と「...