第三章 アイアイの大冒険 第三章⑪ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 沈黙ののち、ダガールは深く息を吐いた。まるで胸の奥に溜まった何年分もの重さを吐き出すように。「……わかっているんだ。もちろん、俺だってわかっている。村が“あの日”から動いていない …
第三章 アイアイの大冒険 第三章⑩ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 光に満たされた視界がゆっくりと晴れていく。アイアイはまぶしさに耐えるように瞬きを繰り返し、ようやく輪郭を取り戻した世界を見つめた。 そこには、確かに村があった。村以外の風景 …
第三章 アイアイの大冒険 第三章⑨ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ グリグリの手の中で、旧塔で見つけた“鍵”がわずかに光を放っていた。その光は装置のくぼみと共鳴するように脈打ち、青白い反射が壁や天井を淡く照らしている。 アイアイは無 …
第三章 アイアイの大冒険 第三章⑧ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 轟音と土煙が入り混じる。黒い腕は十数本を超え、もはや数える意味すらなかった。そのすべてが、ダガールと猫の使者を押し潰そうと渦を巻く。 「ダガールっ!下がって!」猫の使者の声 …
第三章 アイアイの大冒険 第三章⑦ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 風が止んだかと思うと、また微かに流れ出す。それはまるで、こちらの様子をうかがうように、迷いながら谷を抜けていく風だった。 「三度、曲がった先に“門”があるはず……だよね?」 …
第三章 アイアイの大冒険 第三章⑥ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 右の崖道を選んだ一行は、風の音が少しずつ遠のいていく感覚の中で、しばらく岩の間を縫うような細道を歩いていた。ガルガンチュアの示した通り三度曲がったころ、道幅はわずかに広がり、やが …
第三章 アイアイの大冒険 第三章⑤ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ “鏡の穴”から現れた黒い腕──あの異形のものが霧散したあと、四人はその場にしばらく立ち尽くしていた。 「本当……何だったんだ、あれ」 再びアイアイが口を開いた。目を見 …
第三章 アイアイの大冒険 第三章④ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 焚き火の煙が、湿った空気に滲むようにして、空へと昇っていく。風は幾分落ち着いたものの、谷の奥からはまだ不規則な唸りが時おり響いていた。 ダガールは荷車をそっと地面に下ろし、 …
第三章 アイアイの大冒険 第三章③ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 走り続けた三人がようやく峡谷に入ると、風の性質が一変した。 それまで三人の頬を撫でていたような流れが、今は岩壁にぶつかって跳ね返り、まるで意志を持つかのように三人と一体を押し戻そ …
第三章 アイアイの大冒険 第三章② Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 「アイルの……?」アイアイの声が、反射的に漏れた。 その名前は、母の名前であり、映像の少女の名前でもある。同一人物であることは本来あり得ないが、どちらにしても今のアイアイに …