第五章 アイアイの大冒険 第五章⑱ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ シーカーは、ただ走っていた。どこへ向かっているのかもわからないまま、ただ追い立てられるままに。 背後から、羽ばたきと金属の擦れる音が迫ってくる。 「侵入者、北側回廊に移動! …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑰ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 光の中を漂い、浮いた体は何度、回転したのだろうか。眼前を覆いつくす青白い光がはじけた瞬間、シーカーは背中から着地した。痛みを堪え、勢いよく体を起こし、あたりを見回す。 胸が …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑯ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 「そうです。その仲間の名前がシーカーです…」アイルは泣き出しそうな声とともに言った。 簡易診断室は、白い石壁に囲まれた静かな部屋だった。天井の淡い光が脈打ち、部屋全体に柔ら …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑮ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ アイルはメリウス先生のあとを歩いていた。学舎の廊下はひんやりと冷たく、まるで建物そのものが静かに息をしているようだった。 壁際には古い書物と器具が並び、棚には研究員たちが扱 …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑭ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 落下する、というよりも――浮かんでいた。重力の感覚が消え、足も腕も、身体そのものの輪郭さえ曖昧になる。光だけが流れ、色だけが揺れ、耳の奥で風のようなものが鳴った。 やがて― …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑬ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 静寂を破ったのは、スペーラーのため息だった。「えー…最良のパターン、転送装置。最悪のパターン、処刑装置……ふー」「ふーっじゃないですって! スペーラーさん!!」シーカーの大声が響 …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑫ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 朝靄の残る霧丘を、三人は歩いていた。夜の冷気がまだ地面に残っていて、草の先に露が光る。遠くで鳥の声がした。アイルは深呼吸をして、胸の奥まで冷たい空気を吸い込んだ。「朝っていいね。 …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑪ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 夜が深まるにつれ、霧丘むきゅうはさらに静かになった。灯りがテントの内部を冷たく照らし、出入口の向こうで木々が擦れる音がときどき止み、また遠のく。アイルのテントには、ランプの光とは …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑩ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 霧はいつの間にか、白から淡い金色に変わっていた。光の粒が漂い、風もなく、音もない。まるで世界全体が息を潜めているようだった。 その中心に――それはいた。幼児ほどの大きさで、 …
第五章 アイアイの大冒険 第五章⑨ Hikasawa Kikori ヒカサワキコリブログ 翌朝、肌を突き刺すような冷気が詰所を包んでいた。外はまだ静かで、風の音もない。アイルは食堂の片隅で荷物をまとめていた。デバ石を布に包み、ポーチの底へ押し込む。「今日はどんな一日に …