第五章 アイアイの大冒険 第五章7 Hikasawa Kikori 丘を下りると、道はゆるやかな坂になっていた。空はまだ高く、雲が薄く伸びている。昼の光は柔らかく、どこか遠くの街まで届きそうに見えた。前を行く白銀の背中――スペーラーは、歩幅は落ち …
第五章 アイアイの大冒険 第五章6 Hikasawa Kikori 丘の上には、まだ焦げた草の匂いが残っていた。アイルはしばらく呆然とその場に立ちつくしていたが、目の前の白銀の騎士に気づいて慌てて姿勢を正した。 「えっと……助けてくれて、あ …
第五章 アイアイの大冒険 第五章5 Hikasawa Kikori 轟音とともに、巨大な影が丘に降り立った。地面が低く唸り、砂と草が吹き上がる。アイルは思わず目を見開いた。「……きたっ!」 銀の鱗、長い首、広げられた翼。絵本の中でしか見たこ …
第五章 アイアイの大冒険 第五章4 Hikasawa Kikori その日の朝、郵便局は少し慌ただしかった。チワワ局長が新聞を広げたまま、奥の部屋から飛び出してきた。「アイル、シーカー! 二人ともいるか!」局長の声は、いつになく低く響いていた。「 …
第五章 アイアイの大冒険 第五章3 Hikasawa Kikori 村の広場は、昨日の喧騒が嘘のように静まり返っていた。朝露にぬれた石畳の上、アイルはひとり、建てられたばかりの銅像を見上げていた。 二体目の自分。にっこりと笑っているウサギ族の少女 …
第五章 アイアイの大冒険 第五章2 Hikasawa Kikori 翌朝、ディグレンチェ村は、ふだんより少しだけ賑やかだった。 郵便局の掲示板に、紙飾りのついた大きな告知が貼られていた。 〈新人配達ウィーク 参加者募集〉 ――“ …
第五章 アイアイの大冒険 第五章1 Hikasawa Kikori 朝の光が、丘の上の塔の鐘をやさしく照らしていた。大草原の真ん中に位置する『ディグレンチェ村』は、まだ寝息を立てているように静かだった。草原を流れる風が村をやさしくなでるよ …
第四章 アイアイの大冒険 第四章21【第四章 完】 Hikasawa Kikori アイルは、しばらくのあいだ何も言わずに立っていた。光が消えたあとも、まるで夢の続きの中にいるような表情だった。やがて、彼女は小さく首を傾げて口を開いた。 「……ここは、どこ …
第四章 アイアイの大冒険 第四章20 Hikasawa Kikori 大空洞のざわめきから完全に遠ざかると、通路には信じられないほどの静けさが戻っていた。息を整えるたびに、胸の奥に新しい空気が満ちていく。暗闇を抜けた先に、ようやくかすかな青白い光― …
第四章 アイアイの大冒険 第四章19 Hikasawa Kikori 爆発の余韻が消え、しばらくしてから耳に静寂が戻ってきた。通路のあちこちで火薬の燃え残りがくすぶり、小さな炎がじりじりと床を照らしていた。赤橙の揺らめきが、暗闇の通路に不気味な生命 …