2025-10

第一章

アイアイの大冒険 第一章④

なにかの聞き間違いだと思ってアイアイは特に気にしなかったが、まわりを見回したことで別のあることが気になった。「おばあさんは、デバ石はもっていないんですか?」この世界の人なら、ほとんどがデバ石は肌身はなさずもっている。それこそ、子どもから老人...
第一章

アイアイの大冒険 第一章③

川を渡り、午後になったころ、小さな林を抜けた先で、一本の煙が空に向かって細く立ち上っているのが見えた。近づいていくと、そこには旅装束をまとった年老いた老婆が腰を下ろし、焚き火の上に鍋をかけていた。白く長い毛と、つぎはぎの赤いショール。腰を丸...
第一章

アイアイの大冒険 第1章②

それから少し進んだ先で、小さな川が現れた。細く蛇行するその流れは透明で、底の石がはっきりと見えるほどだった。川縁に腰を下ろしたアイアイは、ポケットをさぐり、カラスの嘴から取った丸い石を取り出した。水面は朝の光を受けてきらきらと輝き、あたりに...
第一章

アイアイの大冒険 第一章①

水平線の向こうへとつづく一本の街道を、ひとりの少年が歩いていた。朝からの霧はまだ晴れておらず、見渡す先には、かすんだ丘の稜線がぼんやりと浮かんでいた。上空には1羽のカラスが旋回しており、時折、鳴き声を発している。崖の村ディグレンチェを出てす...
序章

アイアイの大冒険 序章

「アイアイ」の吹いた草笛が風で運ばれ、真っ黒な崖に吸い込まれていった。「ときより強くふく風」と「真っ黒な崖」、「森の大きな木」、それに「村のみんな」。それがこの村とアイアイのすべてだった。広大な「フィクチオーン大陸」の端に位置する「岩」と「...