光の中を漂い、浮いた体は何度、回転したのだろうか。
眼前を覆いつくす青白い光がはじけた瞬間、シーカーは背中から着地した。
痛みを堪え、勢いよく体を起こし、あたりを見回す。
胸がざわつき、足元はまだ現実に馴染まない。
「……ここ、どこだ…?」
視界が安定し、石造りの円形室がゆっくり姿を現す。
天井は低く、壁面にはぎっしりと刻印が走っていた。
古い地下遺跡を改修したような、息苦しい雰囲気。壁は湿気と苔で覆われ、床もじっとりと濡れていた。
すぐ横でスペーラーが泥を払いながら立ち上がる。
「スペーラーさんも来てくれたんですね!」
シーカーは嬉しくなってスペーラーを見上げた。
「ふー…『転送』で当たりだったということでよさそうですね。ふー。まあここがあの世でなければですが…」

すでに立ち上がっているスペーラーを見て
シーカーは額を押さえ、立ち上がり再度、あたりを見回す。
――アイルはどこだ?
胸の奥が冷たくなる。
モヤモヤの姿もない。
やってきたこの部屋には、自分とスペーラーしか見当たらなかった。
そのとき。
ガタン、と重たい音を立てて扉が開いた。
入ってきたのは、分厚いローブを着たフクロウ族の男。
眉間に深い皺が刻まれ、片目は鋭く光っている。もう一方には眼帯をしていた。
こちらを見た瞬間、まるで“侵入者”を発見した猛禽のように目が細まった。
「……お前らは誰た」
低い声だった。
「えっ、いや、その…えーとですね…」
シーカーが近づくと、男は羽根を広げるように袖を広げ、遮る。
「近づくな。転送記録に“外部からの割り込み”などない。どうやって、ここへ侵入した?」
スペーラーが面倒くさそうに片手を上げた。
「ふー……こちらにもわからないことを説明しようがありません。まあ、勝手に転送されてきただけですから」
その一言で、フクロウ族の男の目つきがさらに険しくなる。
「勝手に……?つまり不正侵入を認めたというわけだな」
「いや違います!違うんです!そういう意味ではないんです!」
シーカーは慌てて前に出た。
「俺たちは友だちを探して――なんだかんだで!塔があって!光の柱で――!」
「意味不明だ」
男は冷酷なまでに即答した。
「私はヘルマン・ルーグレイ。第四区担当研究官。侵入者の処遇は学院規定に沿って判断される」
そして、杖の先を軽く床に叩いた。
――カァン。
乾いた金属音。そして何やら壁の装置に向かってなにか話していた。
「ちょっと待ってください。まずは話をきいてくださいよ」
シーカーは必死に言葉をつづけたが、隻眼のフクロウはにらみつけるだけだった。
直後、廊下の奥で羽ばたく音が響いた。
「何か来ますシーカーさん!」
影が天井を横切る。
暗い羽、赤い眼――カラス族の警備員たちだ。

「ヘルマン様、侵入者の報告を確認。即時拘束します」
「待ってください!俺たちは本当に――!!」
シーカーが叫ぶ間もなく、カラス族が一斉に滑空し、鋭い爪のついた棒で逃走経路を塞いだ。
スペーラーは大きくため息をついた。
「……ふー。めんどうなことになりました。私は説得に向かないので、、、、逃げましょう。めんどうだし」
「逃げるたってどうするんですか!!」
スペーラーは通路を塞ぐカラス族の一人に体当たりして退路を作った。それと同時にシーカーも続いて通路に走り出した。
スペーラーが勢いよく扉を閉め、扉を壊す。ほんの数秒の時間稼ぎだ。
走り出して数秒後には、背後からカラス族の声が響く。
「侵入者を逃がすな!廊下D4封鎖しろ!」
羽音が迫ってくる。
黒い影が天井から滑り降りる。間一髪のところでカラス族の鉤つき棒がシーカーを外す。
シーカーは息を切らし、そのまま角を曲がった。
角を曲がり切れなかったカラス族たちが折り重なるように壁にぶつかった。
「アイル……どこだーーーー!」
叫んだ声は、長い廊下に吸い込まれていった。

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